設備工事の仕事に興味を持って求人情報を見ていると、「未経験者歓迎」という言葉をよく見かけると思います。私たちも、経験のない方がこの業界に挑戦してくれることを心から歓迎しています。
しかし、いざ現場に入ると、最初は飛び交う言葉の意味が分からず、戸惑う場面があるかもしれません。現場では、作業をスムーズに進めるために、昔から使われている独特の専門用語や略語が日常的に使われています。
「何を言っているのか分からない」「質問したいけど、基本的なことかもしれない」と感じてしまうのは、誰しもが通る道です。
そこで今回は、これから設備屋を目指す方や、入社して間もない方が少しでも安心して現場に馴染めるように、現場でよく使われる基本的な専門用語をいくつか解説します。
一度にすべてを覚える必要はありません。「こんな言葉があるんだな」と知っておくだけでも、現場でのコミュニケーションが少し楽になるはずです。
【建設現場の基本・共通編】
まずは、設備工事に限らず、建設現場全体で広く使われている基本的な言葉から見ていきましょう。これらは、現場での一日の流れや安全に関わる重要な言葉です。
朝礼(ちょうれい)
一日の作業を開始する前に行うミーティングのことです。その日の作業内容、人員の配置、安全に関する注意事項などを現場の全員で共有します。現場全体の流れを把握し、安全に作業を進めるための非常に重要な時間です。
KY(ケーワイ)
「危険予知」の頭文字をとった言葉です。作業を開始する前に、その日の作業にどのような危険が潜んでいるかをチームで話し合い、対策を確認する活動を指します。「KY活動」「KYミーティング」などと呼ばれます。安全第一で作業を行う建設現場ではなくてはならない習慣です。
段取り(だんどり)
作業を効率よく進めるための事前の準備や計画のことです。「今日の作業の段取りを確認する」「次の工程の段取りをしておく」といった使い方をします。この段取りがしっかりできているかで、その日の作業がスムーズに進むかどうかが決まる、非常に重要な業務です。
手元(てもと)
職人さんの作業を補助する役割の人、またはその作業自体を指します。材料を運んだり、道具を渡したり、片付けをしたりと、職人さんが自分の作業に集中できるようにサポートします。未経験者はまずこの「手元」作業から仕事を覚えていくことが多く、現場の流れを学ぶ上で大切なポジションです。
職長(しょくちょう)
現場で作業員チームをまとめるリーダーのことです。作業の指示を出したり、安全管理を行ったりする責任者であり、現場監督と作業員の間の橋渡し役も担います。現場で何か困ったことがあれば、まず職長に相談することが多いでしょう。
墨出し(すみだし)
設計図に書かれている壁や柱の位置、配管を通す場所などを、床や壁に実寸で書き出す作業のことです。この墨(線)を基準にすべての工事が進められていくため、ミリ単位の精度が求められる非常に重要な工程です。
養生(ようじょう)
工事中に、すでに完成している部分や既存の設備、床、壁などを傷つけたり汚したりしないように、シートや板などで保護することです。お客様の大切な建物を守るための基本的な作業であり、丁寧な仕事ぶりの証でもあります。
バラす
組み立てたものを分解したり、解体したりすることを指します。例えば、工事のために組んだ足場を解体するときに「足場をバラす」と言ったりします。
はつる
コンクリートを削ったり、壊したり、穴を開けたりする作業のことです。専用の電動工具などを使って行います。配管を通すために壁や床のコンクリートを部分的に削る際などに「ここを少しはつってください」といった指示が出されます。
定尺(ていじゃく)
メーカーで製造された、規格で決められた長さの材料のことです。例えば、配管や鋼材などは、4メートルや5.5メートルといった「定尺」で販売されています。現場ではこの定尺の材料を切断して、必要な長さに加工して使用します。
ダメ工事・ダメ回り
工事がほぼ完了した最終段階で、図面通りに仕上がっているか、傷や汚れがないかなどを検査し、見つかった不具合や修正が必要な箇所を直していく作業のことです。「ダメ」という言葉から悪い印象を受けるかもしれませんが、手抜き工事のことではありません。完璧な状態でお客様に引き渡すための、最後の仕上げとなる重要な工程です。
【配管・衛生設備編】

ここからは、私たちの専門分野である給排水や衛生設備工事の現場で特によく使われる言葉です。水回り特有の用語が多くなります。
勾配(こうばい)
傾きや斜面の度合いのことです。特に排水管は、水が自然に流れていくように、わずかな傾き(勾配)をつけて設置する必要があります。この勾配が正しくないと、水が流れずに溜まってしまったり、逆流してしまったりする原因になります。
芯々(しんしん)
配管や部材の中心から中心までの距離を指す言葉です。「この配管とあの配管の芯々は30センチで」といったように、設置する位置を決める際に使われます。図面でもよく使われる寸法の表し方です。
逃げ(にげ)
配管などを設置する際に、柱や梁といった障害物を避けるために、配管の経路を迂回させることを指します。「ここで梁があるから、下に逃げよう」というように使います。
スリーブ
将来、配管やダクトなどを通すために、あらかじめ壁や床、基礎のコンクリートに開けておく穴や、そのための筒状の部材のことです。建物の建設中にこのスリーブを入れておくことで、後からコンクリートをはつる必要がなくなります。
インサート
天井から配管やダクトなどを吊り下げるための金具(吊りボルト)を取り付けるために、あらかじめコンクリートに埋め込んでおく雌ネジのついた金物のことです。スリーブと同様に、建物の建設段階で設置します。
フレキ
「フレキシブルチューブ」や「フレキシブルパイプ」の略称です。その名の通り、手で曲げることができる柔軟性のある配管です。給水管や給湯管を蛇口や給湯器に接続する最後の部分など、狭い場所や位置の調整が必要な箇所でよく使われます。
トラップ
キッチンや洗面台、浴室の排水口の下などにある、配管の一部に水を溜める仕組みのことです。この溜まった水(封水)が、下水道からの臭いや害虫が室内に上がってくるのを防ぐ蓋の役割を果たします。S字やP字、U字の形をしたものが一般的です。
桝(ます)
排水管の合流部分や、点検・清掃のために設けられる設備のことです。地中に埋められており、地上にはマンホールのような蓋が見えます。排水管が詰まった際には、この桝を開けて内部の点検や清掃を行います。
サニタリー
トイレ、洗面所、浴室といった水回りの衛生空間を総称する言葉です。図面などでは、これらの場所をまとめて「サニタリー」と表記することがあります。
【空調設備編】

エアコンなどの空調設備工事で使われる言葉です。給排水とはまた違った専門用語が登場します。
ドレン
エアコンの室内機で発生する結露水のこと、またはその水を屋外に排出するための配管(ドレン管)を指します。このドレン管にも、水がスムーズに流れるように適切な勾配をつける必要があります。
冷媒(れいばい)
エアコンの室内機と室外機の間を循環し、熱を運ぶ役割をするガスのことです。この冷媒ガスが気体になったり液体になったりすることで、部屋を冷やしたり暖めたりする仕組みです。
室外機・室内機(しつがいき・しつないき)
エアコンを構成する主要な機器です。部屋の中に設置するのが室内機、屋外に設置するのが室外機です。この二つが冷媒管で接続されて一つのシステムとして機能します。
ダクト
空調設備において、空気を送るための管のことです。ビルや商業施設などの大きな建物では、一つの大きな空調機から各部屋へ冷たい空気や暖かい空気を送るために、天井裏などにこのダクトが張り巡らされています。
隠蔽配管(いんぺいはいかん)
エアコンの室内機と室外機をつなぐ冷媒管やドレン管を、壁の中や天井裏などに隠して見えないようにする施工方法です。室内から配管が見えなくなるため、見た目がすっきりするという利点があります。
【道具・材料編】

現場では、様々な道具や材料も独特の呼び方をされることがあります。知っておくと、先輩とのやり取りがスムーズになります。
レッカー
クレーン車のことを現場ではよく「レッカー」と呼びます。重い資材や機材を吊り上げて、高い場所や遠い場所に移動させる際に使用します。
ユニック
トラックの運転席と荷台の間に小型のクレーンが搭載された車両のことです。資材をトラックに積み込んだり、荷下ろししたりする際に活躍します。クレーン付きトラックの代名詞として使われることが多いです。
インパクト
「インパクトドライバー」という電動工具の略称です。ネジやボルトを締めたり緩めたりする際に使います。回転と同時に打撃(インパクト)を加えることで、強い力で締め付けることができる、現場では最もよく使われる工具の一つです。
サンダー
「ディスクグラインダー」という電動工具の略称です。円盤状の刃(ディスク)を高速回転させて、金属を切断したり、表面を研磨したりする際に使用します。
塩ビ管(えんびかん)
「塩化ビニル管」の略称で、給排水設備工事で最も一般的に使われる灰色のプラスチック製の配管です。加工がしやすく、錆びないという特徴があります。
継手(つぎて)
配管同士を接続したり、配管の向きを変えたり、分岐させたりするために使われる部品の総称です。エルボ(L字に曲げる)、チーズ(T字に分岐する)、ソケット(直線でつなぐ)など、様々な形状のものがあります。
【現場の慣習・その他編】
最後に、直接的な作業内容ではありませんが、現場でのコミュニケーションを円滑にするために知っておくと便利な言葉を紹介します。
一服(いっぷく)
現場での短い休憩時間のことです。一般的に10時と15時頃に15分から30分程度の休憩を取ることが多く、これを「一服しようか」と言ったりします。職人さんたちとコミュニケーションをとる大切な時間でもあります。
猫(ねこ)
工事現場で土砂や資材などを運ぶために使われる「一輪車」のことです。なぜ猫と呼ばれるのかは諸説ありますが、狭い場所をすり抜けていく様子から、などと言われています。
丁(ちょう)
豆腐を数えるときのように、数を数える際の単位として使われることがあります。例えば、道具などを数える際に「一個、二個」ではなく「一丁、二丁」と言う職人さんもいます。
〜丁(〜ちょう)
これは少し特殊な使い方ですが、長さの単位であるメートルを省略して「丁」と呼ぶことがあります。例えば「3メートル」を「3丁」と言うことがあります。文脈で判断する必要がありますが、もし分からなければ素直に確認しましょう。
行って来い(いってこい)
配管などが、ある場所から出て、ぐるりと回ってまた同じ場所に戻ってくるような配管経路を指すことがあります。また、単純に往復作業を指して使う場合もあります。
まとめ
ここまで、設備工事の現場で使われる専門用語の一部を紹介してきました。
初めて聞く言葉ばかりで、難しく感じたかもしれません。しかし、最初からすべてを理解している人はいません。現場で実際に作業を見ながら、先輩たちの会話を聞きながら、一つひとつ覚えていけば大丈夫です。
何よりも大切なのは、分からない言葉が出てきたときに、そのままにしないことです。「今の〇〇ってどういう意味ですか?」と素直に質問すれば、どの先輩もきっと丁寧に教えてくれます。その積極的な姿勢が、あなた自身の成長につながります。
私たちは、未経験からこの業界に飛び込むあなたの挑戦を全力でサポートします。この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、設備屋という仕事への第一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

